
産学協働で安全を革新
時代とともに
製品も人も進化を遂げる
我々が手がける製品は、腰に巻きつけるタイプの胴ベルト型から、体に纏うタイプのフルハーネス型へと進化を遂げ、墜落時に体が受けるダメージは低減されるようになりました。しかしながら、フルハーネスで宙吊りになった際にはベルトが鼠径部を圧迫することから、体の血の流れを妨げるという新たなリスクを背負うことになりました。ここに医療の視点から製品を紐解く、国内初の挑戦が幕を開けたのです。
知の融合が生んだ革新
フルハーネスで宙吊りになり、鼠径部の圧迫により血流が滞ると、身体にどのような影響があるのか。フルハーネスの先進国である欧米諸国の文献等によれば血流の停滞により身体は酸素不足となり、血栓の発生や血圧の低下、呼吸の乱れ等がおき、これが長時間続くと命に関わる危機的な状況に陥るとされています。
そこで私たちは、同じく血流の異常から発症する「エコノミークラス症候群」の研究と被災地における啓蒙活動の第一人者、新潟大学病院の榛沢教授とタッグを組み、医学の視点からもエビデンスを積み重ね、墜落を食い止める際の安全性を更に一段と高いレベルに引き上げることを決意しました。
ベルトによる鼠径部の圧迫から身体を解放し、血流を確保するために使用する補助器具は従来よりありましたが、実際にその器具を使用した状態で鼠径部の詳細な血流測定を実施し、血流量の確認を行いながら、より使いやすい補助器具の開発をスタートするに至りました。

試行錯誤の先に、光が灯る。
血流に関する検証は、榛沢教授と共同で国立病院機構新潟病院で実施。フルハーネスを着用した被験者を三脚とウインチで吊り下げ、補助器具を使用しながら大腿静脈を中心とした血流の測定を実施。有効性の確認を行い新たな補助器具が完成しました。(エマージェンシーストラップ2)
しかし、フルハーネスで宙吊りになった際の身体的な負担は、血液の滞留だけではありません。鼠径部の圧迫には大きな苦痛も伴います。この苦痛を軽減するには鼠径部に集中しやすい荷重を、それ以外の臀部や腰回り等に分散させて軽減させる必要があります。またその際には、被災者の姿勢をなるべく座位にすることで有効性が高まります。これを新たなハーネス「EASY Harness CROSS(イージーハーネス クロス)」の設計に反映すべく試行錯誤を繰り返しました。
墜落時の姿勢を理想的な座位に近くするには困難が伴いました。特に身長や体重、体格も異なる作業者に適切にマッチさせるには幾度もの試験と検証が必要でしたが、このプロセスを通じて習得できた、各ベルトやパーツの構造や位置関係、ベルトの長さ等に関するノウハウは私たちの宝です。
01Trial and Error

「血管」の異常が人体にもたらす影響を知り尽くす榛沢教授との協働を実現
02Trial and Error

三脚とウィンチを用いて被験者を吊り下げ、補助器具の有効性を検証
03Trial and Error

有効性の確認には、エコー(超音波)を用いて血流を測定
競い合えある仲間の存在
私たちの新たなフルハーネス「EASY Harness CROSS」の開発に当たっては、各部のパーツに開発担当者を設けて進めました。大きくはベルト、バックル、SMART SLIDE、フックキーパー、ベルトキーパー、ショルダーパッド等です。各担当者が責任感と情熱をもって設計と開発にあたり、中でもベルトのデザイン、腿部のバックルに関してはサンコーだけの技術として特許を申請中です。担当者が互いに切磋琢磨しあいながら開発してきたことも大きな原動力となり、一つのフルハーネスとして昇華させることができました。
そして、2024年10月にはGOOD DESIGN賞を受賞。サンコーで培われてきた安全に対する姿勢と想い、チームワークが認められた瞬間です。
発売開始以降、建設業界はもとより、ありとあらゆる業界・企業様からお問い合わせをいただき、フルハーネスの新しいスタンダードとして受け入れられ始めています。


